人間を装った悪魔たち

あの時あの事がなかったら今頃はどうなっていたのだろう。 人は新しいものが好きで欲望深くて愛されたくて仕方ない生き物だということを改めて知った。

家族ごっこ

姉はその後も私に寄ってこようとしたり話しかけてきたりしたけど、どこかやっぱり避けたい気持ちの自分が居た。



素直になれないとか久しぶりで恥ずかしいとかなんかそんな気持ちとは違う。



心が勝手に拒否してた。



最初の騒動からパッタリ縁を切ったみたいに祖父母に一度も電話したりお土産を送ったりしなくなった悪魔たち。



それなのに死んだ時だけ偽善者ぶって葬儀に参列したり香典包んできたり普通の顔して話しかけてきたり。



そっちがその気なら別に絶縁でもいいんですけど。


むしろ関わっていない方が平和なのでこちらとしてはよろしいんですがね。




中途半端にチラチラ存在出してくるなよ。




納棺師の方に死化粧は身内のどなたかやってあげましょうかと言われ、姉からの謎のゴリ推しで私がする事になり、やっぱり上手だねとか言ってる横で眉毛もっとこんな感じじゃなかった?とかあーそんな感じだね!とかわかったような発言したり。



お前さ何年も会ってないだろうよ。


お前が家族をバラバラにさせてみんなの心を傷付けたんだよ?


今更家族気取りすんなって。



無性に腹が立った。



なんかそういう無神経な姉の言動が許せなかったんだと思う。



心が狭い、器が小さいと言われたっていい。



それが正直な自分の感情だった。



周りから見れば普通の光景だろうけど、私は家族面して親族席に座ってる姉が違和感でしかなかった。




お通夜の後は親戚一同で会食、会場に宿泊。



自動的に席が近くなり話しざるを得ない状況になってしまった。



「久しぶりに飲もうかなー!」



そう言って姉はハイペースでお酒を飲んでいた。



そのうち明らかに酔っ払った上機嫌の姉が家族に絡み始めてきた。



「ねー!みんなでLINE交換しよー♪」




私が一番避けたかった連絡先交換・・・



もうあの時の感覚がフラバして震える。


そしてまた悪魔との距離も近くなった気がしてさらに震えた。



どうにか話題変えたり離席しようと試みたが失敗に終わった・・・



仕方なく交換することにした。


番号は教えたくなかったのでIDで教えた。



別に今更交換したって連絡取り合う気ないんだけどね。



お酒の力も相まってだんだんと馴れ馴れしく人の心に踏み入ってこようとする姉に嫌気がさし、不快な気分になりなんだか具合が悪くなってきた私は葬儀場での宿泊をやめた。



母は私の気持ちを察してくれたようで何も言わず頷いてくれた。



ただ、息子はなかなかない状況に興奮して泊まりたいと言い張ったので母に任せて私は足早に会場を後にした。